交通事故被害:受け取る慰謝料には3つの算定基準がある

交通事故被害:受け取る慰謝料には3つの算定基準がある

2020年6月13日 オフ 投稿者: 田中

交通事故被害でケガをして後遺障害が残ってしまった場合の損害賠償請求は、自賠責保険からの支払いが基本となり、自賠責保険では足りない分を任意保険が補填する流れになります。
自賠責保険は、被害者に対する最低限の補償として国が定める制度であるため、その補償額は必ずしも充分とは言えません。
そのため高額の補償を必要とする被害者にとっては、任意保険でいかに実情と近い金額の補償を得られるかが重要です。
今回は自賠責保険での請求手続きが終わった後の、任意保険への請求について解説致します。

[損害賠償請求の流れ]

交通事故に遭ってから損害賠償金を受け取るまでの流れを、簡単におさらいしたいと思います。

①交通事故の発生
 ↓
②ケガの治療
 ↓
③一定期間治療するも完治しない
 ↓
④症状の固定
 ↓
⑤自賠責保険への請求手続き
 ↓
⑥任意保険への示談交渉
 ↓
⑦損害賠償金の受け取り
 ↓
⑧一件落着

これからお話しするのは上記流れの⑥、任意保険への示談交渉についてです。

[損害賠償額の算定基準は1つじゃない]

任意保険に補償金の支払い請求を行うとき、損害賠償額を示談交渉で決めなくてはなりません。
その際に用いられる算定基準は実は3つも存在し、どの基準で交渉するかで受け取る金額に差が出てきます。

【算定基準その1:自賠責基準】

自賠責基準とは、自賠責保険の支払い基準です。
補償額の算定基準が16等級・142項目に細分されており、認定される等級の違いで支払額に差が出ます。
そのためどの等級に認定されるかに重点が置かれる傾向にあります。
自賠責保険は被害者に対して最低限の補償を行うことが目的であるため、3つの算定基準の中で最も金額の低い基準です。

【算定基準その2:任意基準】

任意基準とは、任意保険会社が独自で提示する算定基準で、保険会社によって内容が異なります。
詳細が公開されていないことも多いようですが、自動車保険の定款に記載されている『人身傷害補償』という慰謝料の基準を目安にしているようです。
金額的には3つの基準の、真ん中です。

【算定基準その3:裁判基準】

裁判基準は「弁護士会基準」とも呼ばれ、損害賠償金請求が裁判になった時に、被害者側の弁護士が慰謝料の算定基準として用いる基準です。
裁判基準の詳細は日弁連交通事故相談センターが発行する『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』、『交通事故損害額算定基準』という2冊の本で確認できます。
また裁判基準は、交通事故紛争処理センターなどの裁判外紛争解決手続きに用いられることもある基準で、3つの算定基準の中で最も高額です。

[実際の示談交渉で用いられる基準]

上記で述べたとおり、損害賠償額を最も高く算定してくれるのは裁判基準です。
しかし実際の示談交渉では、任意保険会社がこの裁判基準を持ち出すことはまずありません。
補償金を支払う立場である保険会社にとって、損害賠償額は低い方が都合がいいからです。
示談交渉を被害者自身が行う場合は、保険会社は任意基準を提示してくるのが一般的です。

【弁護士なら裁判基準で交渉できる】

被害者の立場からすると、損害賠償額は高い方がいいに決まっています。
しかし自分で示談交渉をしても裁判基準で算定してくれる可能性はほとんどありません。
それどころか、裁判基準が適用されるケースなのかどうかも判断できないはずです。
そんなときは専門の法律家へ相談してみるのも作戦の一つです。
示談交渉で納得できる額を提示してもらえなかったときは、一度、専門の弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。

[行政書士にできること]

裁判基準で示談交渉を希望する場合は弁護士への相談がおすすめです。
しかしながら当職は、弁護士ではなく行政書士です。
それなのになぜ、行政書士ではなく弁護士をおすすめするのでしょうか?
それは、示談交渉が行政書士の受任業務の範囲外だからです。
行政書士と弁護士では引き受けてもよい業務の範囲が異なり、同じ法律家でも、全く同じ仕事ができるわけではありません。
今回ご説明した内容は、実は行政書士の業務からは外れているのです。
しかし交通事故業務に精通した行政書士は、事故後の手続きに関して情報提供をすることが可能です。
弁護士への相談を躊躇している方でも、情報を得ることで気持ちの整理ができるかもしれません。

事故後の手続きでお困りの場合は、まずは行政書士から情報を集めてみてください!