弁護士特約が使えるとき・使えないとき
前回、前々回と弁護士特約について紹介してきました。
今回は弁護士特約が使えるとき・使えないときについてみていきたいと思います。
弁護士特約が利用できるケース
それでは弁護士費用特約を利用できるケースはどのような場合でしょうか。
具体的に解説していきます。
弁護士費用特約の対象者は契約をしている人
弁護士費用特約は任意保険に付帯されている特約になりますので、あくまでその特約条項がなければ利用することができません。また、弁護士費用特約の対象者は基本的にその弁護士費用特約を契約している保険契約者です。
さらに、弁護士費用特約は、保険契約者本人以外であっても一定の範囲の親族であれば特約の対象となります。
それでは詳しい人的対象範囲について解説していきます。
本人以外でも弁護士費用特約の利用ができる
弁護士費用特約を利用できるのは一義的には保険契約をしている契約者本人ですが、それ以外でも本人と一定の関係にある人については弁護士費用特約の利用が可能になります。
弁護士費用特約が適用されるのは以下に挙げるような人になります。
- 保険契約者本人の配偶者・内縁関係の配偶者
- 同居の親族
- 別居の未婚の子
- 保険契約している自動車に搭乗していた人
- 保険契約している自動車を所有している人
つまり、交通事故の被害者本人が弁護士費用特約に加入していなくとも自動車に乗っていた場合には弁護士費用特約が利用できる可能性があるということです。
また、適用対象は家族のみに限られていない点は重要です。
友人や恋人であっても弁護士費用特約を利用することができる可能性があります。
保険契約の内容によって適用対象者は変わってくる可能性がありますので、詳細についてはご自身が加入している保険について確認してください。
具体的には保険の約款を確認するか、保険会社に直接問い合わせてみましょう。
契約自動車に乗っているとき以外にも利用可能
契約自動車を対象となる人が運転しているときに交通事故に遭った場合には弁護士費用特約が利用できることに争いはありません。
それ以外の事故態様であっても弁護士費用特約を利用できる場合があります。
弁護士費用特約の対象となる交通事故は以下にあげるようなものです。
- 契約をした自動車を運転しているときの交通事故
- 歩行中に遭遇した交通事故
- 契約している自動車に乗車しているときに遭遇した交通事故
- 自転車を運転しているときに遭遇した交通事故
- タクシーやバス等の公共交通機関に乗車しているときに遭遇した交通事故
- 知人の自動車に乗っているときに遭遇した交通事故
以上のような事例であっても、保険契約者に重過失がある場合など一定の場合には弁護士費用特約の適用対象外となりますので注意が必要です。
加害者が自動車保険に加入していない場合
弁護士費用特約に加入されている場合には基本的には特約を利用できるケースであれば利用するべきですが、以下では特に弁護士費用特約を利用するべき事案について具体的に解説していきます。
まず、交通事故の加害者が自動車の任意保険に加入していない場合です。
このような場合には加害者本人と示談交渉を進めていく必要がありますが加害者自身が誠実に対応してくれなかったり、途中から連絡がつかなくなったりするリスクがあります。
そのような場合でも弁護士に依頼することで加害者を交渉の場に引きずり出すことができますし訴訟を提起して強制力をもって回収にあたることができます。
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士による交渉費用や訴訟費用についても特約で補償することができますので費用倒れにならずできるだけ被害回復することができます。
もらい事故の場合
被害者側に交通事故に対する過失がゼロで、加害者の過失割合が100%のような事故、いわゆるもらい事故の場合には弁護士費用特約を利用するべき事案であると言えます。
前述のとおり被害者の過失割合がない場合に被害者側の保険会社が示談交渉をすることは弁護士法違反になります。
しかし、被害者の方がご自身で加害者本人や加害者側の保険会社の担当者と示談交渉を進めていくことは困難が伴います。
そして、被害者に過失割合がない場合であっても弁護士であれば被害者を代理して示談交渉をすることができます。
もらい事故の場合には弁護士費用特約を利用して費用倒れになることなく弁護士に交通事故の対応を依頼してしまいましょう。
弁護士特約が利用できないケース
それでは弁護士費用特約が利用できない事案はどのようなものがあるのでしょうか。
一般的な保険会社であれば、以下のような場合には弁護士費用特約を利用することができないと規定していることが多いです。
- 保険契約者が故意や重大な過失により交通事故を発生させた場合
- 無免許運転や薬物などの影響で正常な運転ができない状態で運転した結果交通事故を発生させた場合
- 酒気帯び運転・酒酔い運転によって交通事故を発生させた場合
- 犯罪行為・自殺行為・闘争行為によって交通事故を発生させた場合
- 被保険者が、自分の両親や配偶者、子ども、自動車の所有者に対して損害賠償するような交通事故の場合
- 損害が台風・洪水・高波などの自然災害によって発生した場合
- 損害が被保険者の所有物・使用物による摩滅・腐食・錆などの自然損耗が原因の場合
- 自動車に適切に乗車していなかった場合や極めて不適切な態様で運転・乗車していたような場合
- 自転車同士の事故や自転車と歩行者の事故など自動車に関係しない交通事故の場合
- 業務用の自動車で発生した交通事故
上記のように、被害者に故意や重過失がある場合には弁護士費用特約を利用することができないと規定している保険会社が多いでしょう。
しかし、被害者側に少しでも過失があると弁護士費用特約を利用できないということではありません。
基本的には被害者側に過失割合がある場合にも弁護士費用特約を利用できる場合が多いですので躊躇することなく保険会社に弁護士費用特約の適用を伝えましょう。
示談金に納得できなければ弁護士への依頼を
交通事故に際して相手方とトラブルになった場合や、示談金として提示されている金額に納得いかない場合には弁護士への依頼を検討するべきでしょう。
そして、多くの方にとってネックとなっているのが弁護士に依頼する場合の弁護士費用でしょう。
しかし、弁護士費用特約を利用することが分かっていれば費用倒れになることを心配する必要なく弁護士に依頼することができます。