自賠責保険の請求手続きと、書面主義の注意すべき点

自賠責保険の請求手続きと、書面主義の注意すべき点

2020年7月1日 オフ 投稿者: 田中

交通事故被害者が受け取る損害賠償金は、自賠責保険と任意保険から支払われます。
自賠責保険は、被害者保護のために最低限の補償を確保する趣旨で加入が義務付けられている保険です。
そのため損害賠償金の支払いでは、まず自賠責保険が負担して支払い、不足分を任意保険が負担する流れです。

[自賠責保険の請求手続きの流れ]

自賠責保険の支払い請求を行う場合は、以下の流れで業務が進められます。
【①請求書の提出】
被害者側から、自賠責保険会社に対して請求に必要な書類を提出します。
【②損害調査の依頼】
提出された書類は、損害保険料率算出機構内にある自賠責損害調査事務所へ送られ、損害調査が依頼されます。
【③損害の調査】
調査依頼に基づいて、当該事故の発生状況や支払の的確性、後遺障害の等級や損害額などを調査します。
【④損害の報告】
調査結果を、自賠責保険会社へ報告します。
【⑤保険金の支払い】
調査結果を基に、自賠責保険会社から被害者へ、保険金が支払われます。
【⑥保険金の受取】
被害者が保険金を受け取り、一件落着です。

[自賠責保険を請求する際の注意点]

自賠責保険は、自動車の所有者全員に課せられた強制保険です。
そのため人身事故が起きた場合は、ほぼすべての事案で自賠責保険を利用することになります。
必然的に処理する件数も多くなりますので、自賠責保険の請求手続きでは、業務の負担を減らすため書面主義が取られています。

【注意点1:書面主義】

書面主義とは、文字通り書面を基にして全ての審査を行う手法です。
事務処理件数が多い自賠責保険では、迅速かつ公平に案件を処理することが求められます。
そのため、保険金の請求手続きなどには厳格な基準が設けられており、柔軟性に乏しいという側面があります。
例えば労災認定と比べてみた場合、労災認定では労災医が請求者を実際に診察し、その意見が認定審査に反映されます。
しかし自賠責請求手続きは後遺障害診断書などの書面に記載されている内容のみで判断され、レントゲン写真やMRI画像などの医学的証拠資料を優先するする傾向が強く見られます。
その弊害として、審査の対象となっている後遺症が画像に映りにくい場合などは、不利な判定がされかねないという実態があります。

【注意点2:書面の不備も反映される】

自賠責の審査は医学的証拠資料を優先して行われるため、診断書などの書類に実際の状態と異なる内容が記載されていても、そのまま審査に反映されます。
例えば審査に必要なレントゲン写真などが不足している場合は、不足分を追補するよう連絡があります。
しかし記載内容に漏れがあるなどの不備の場合は、何の連絡もしてもらえないのが実情です。

[自賠責支払い請求手続きに掛かる時間]

残念ながら、自賠責保険の請求手続きから支払いが完了するまでの期間は、短いとは言えません。
最短でも申請から約1カ月~2カ月は掛かるとされており、一刻も早い支払いを望む被害者としては辛抱が必要です。
また提出した書類に不備が見つかった場合や提出資料だけで判断が難しいは、外部医療機関などへ照会を行うこともあるため、審査の時間がさらに延びてしまいます。
その他の上部機関へ稟議を行う場合などは、3ヶ月程度の時間が掛かることもあります。

[行政書士にできること]

自賠責の請求手続きは、書面主義であるがゆえに書面準備の重要度が高いです。
しかしながら被害者自身が申請書をはじめとする必要書類・資料を準備することは、とても高いハードルだと言わざるを得ません。
そんなときは、申請手続きに関して専門の知識を持っている法律家に相談するのがおすすめです。
私たち行政書士は書類作成のスペシャリストであり、自賠責保険の請求手続きに関しても専門分野の一つです。

自賠責保険の請求手続きでお困りの場合は、お気軽に行政書士へご相談ください。