交通事故における医療調査とは?

交通事故における医療調査とは?

2020年2月3日 オフ 投稿者: 田中

 

今回は交通事故における医療調査について解説します。

~交通事故における医療調査とは~

交通事故における医療調査とは、①加害者の保険会社から委託を受けた民間の機関が、②主に交通事故と怪我との因果関係を調べることを目的として行われる③調査のことをいいます。

以下、①、②、③にわけて詳しく解説します。

=①について~医療調査の主体=

調査を行う主体は加害者の保険会社ではなく、保険会社から委託を受けた民間の機関、人です。

保険会社とは全く別の機関の場合もありますし、保険会社と同じグループ会社の場合もあります。

前者の代表例として

・株式会社審調社

・株式会社損害保険リサーチ

・東京損害保険株式会社

などがあります。後者の例として

・あいおいニッセイ同和損害調査株式会社

などがあります。

=②について~医療調査の目的=

医療調査の目的は交通事故と怪我との因果関係を調べることにあります。

そもそも交通事故で加害者側から損害賠償金を獲得するためには、

ⅰ 加害者の不注意(過失)による運転

ⅱ 被害者の怪我(損害)の発生

に加え

ⅲ ⅰとⅱとの間に因果関係が存すること

が必要です。

損害賠償金発生のための根拠となる民法709条には以下のとおり規定されています。「よって」という部分が因果関係を現す文言です。

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

仮に、交通事故と怪我との間に因果関係が認められない場合は損害の全部又は一部につき、加害者側から損害賠償金を受け取ることができなくなってしまいます。

交通事故は日常茶飯事に起きており、必ずしも交通事故と怪我との間に因果関係が認められる交通事故ばかりとは限りません。そうした場合、交通事故との因果関係が認められない怪我(損害)については加害者側(保険会社)に賠償義務は発生しませんが、保険会社自身に交通事故と怪我との間に果たして因果関係が存在するかどうかを調査する能力はありません。そこで、保険会社はそうした調査を専門としている調査会社に調査を委託するのです。

以上が表向きとしている医療調査の目的ですが、他には

・支払備金を見積もりたい

・治療費の支払いを打ち切りたい

という目的もあるようです。

支払備金とは、簡単にいうと、保険会社が将来被保険者あるいは第三者(被害者)に支払うであろう保険金(損害賠償金)の見積り金(準備金)のことをいいます。保険金が確実に支払われるよう、法律では保険会社に対し支払備金を積み立てておくことが求められています。そのため、保険会社はいくら積み立てておく必要があるか知るため、医療調査を委託するというわけです。

また、治療費打ち切りに関しては因果関係と関係しています。保険会社としては交通事故と因果関係のある怪我の治療費に関しては当然支払う義務がありますが、因果関係のない治療費についてまで支払う義務はありません。さらに、保険会社はあくまで営利会社であり、加害者側の立場にあるということも忘れてはならないでしょう。すなわち、保険会社としては被害者に支払う賠償金はできるだけ安く抑えたいはずです。そこで、治療費を打ち切る前段階として、被害者が現在受けている治療が本当に交通事故に起因する怪我のために必要かつ相当な治療であるかどうかを調査するために医療調査を委託するというわけです。

=③について~医療調査の内容=

医療調査の内容として特に多く行われるのが「医師への照会」です。医療調査の目的が「交通事故と怪我(損害)との因果関係の有無を調べること」にありますから、それを知るには被害者の怪我の状況に詳しい医師に照会するのが一番確実な方法でしょう。

ただ、「照会」と一言でいっても

・医師に直接電話する

・医師と直接面談する

・医師に対し文書で回答を求める

方法があります。いずれにしても保険会社は自己の契約者ではない被害者の個人情報について医師から回答を得るわけですから、そのためには被害者のプライバシー保護の観点から被害者から個人情報取得のための「同意」を取り付ける必要があります。

少し話がそれますが、保険会社は被害者から上記の「同意」を得るため、ある一定の時期に、被害者に「個人情報取得のための同意書」という書類を送付します。被害者がこの同意書にサインして保険会社に返送すると、保険会社は医師から被害者の怪我の状況や治療状況などについて回答を得ることが可能となります。そして、前述のように、保険会社は少しでも被害者に支払う賠償金を抑えたいですから、被害者に対する治療を早く終わらせようと医師のつまり、言い方を変えれば、保険会社が被害者の担当医師と接触することが可能となり、医師の治療内容に注文を付けたり、必要によっては保険会社に有利になるよう誘導する場合もあるようです。

・保険会社から同意書が送られてきたけどどう対応していいか分からない

・内容も確認しないまま同意書にサインして返送してしまった

・保険会社から治療費支払いの打ち切りを迫られている

などという方ははやめに弁護士や行政書士に相談しましょう。

 

以上