解決事例~後遺障害等級認定に対する異議申し立て

解決事例~後遺障害等級認定に対する異議申し立て

2020年2月23日 オフ 投稿者: 田中

今回は、一度目の後遺障害等級の認定申請で「非該当」となったものの、その後の異議申し立てにより後遺障害等級を獲得できた実例をご紹介させていただきます。また、その後、その事例を通じた注意点も解説したいと思います。

~交通事故からご相談に至るまでの流れ~

相談者Aさんは、赤色信号に従って交差点手前で自動車を停車させていたところ、Aさんの自動車の後方から進行してきたVさん運転の自動車に追突されてしまいました。

交通事故直後、Aさんは怪我の症状はなく病院を受診せずにいました。ところが、交通事故から2、3日経って、Aさんは頭痛、吐き気などに悩まされるようになり、病院を受診したところ「頸椎捻挫」と診断されました。Aさんはその後も首の痛みなどに悩まされたことから病院を定期的に受診し続けました。

そして、交通事故から約8か月が経過したある日、Aさんは加害者の保険会社から症状固定の打診と治療費支払いの打ち切りを通告されました。Aさんはまだ首の痛みが継続していたことから保険会社の担当者に「まだ痛みが残っている。通院したい。」と伝えたところ、「それでは後遺障害等級の認定のための事前認定手続きを行いますので、弊所からお送りする後遺障害診断書の内容を医師に記載してもらってそれを弊所に提出してください。」と言われました。

Aさんは保険会社に言われたとおり、医師に後遺障害診断書の必要事項を記載してもらい、それを加害者の保険会社に提出しました。ところが、加害者の自賠責保険会社から通知された後遺障害等級申請の認定結果は「非該当」でした。

Aさんはまだ首の痛みが残っているにもかかわらず「非該当」という結果には納得がいかず、相談にこられました。

~当職が行ったこととその結果~

ご相談内容やこれまでの経験から後遺障害等級の14級9号を獲得できるのではないかと考えました。そこで、さらに詳しくその可能性を調べるため、相談者様に

・診断書、診療報酬明細書

・後遺障害診断書

・後遺障害等級認定結果の連絡書(「非該当」である旨の連絡書)

・診察の際に撮られたレントゲン、MRIなどの各種画像の写し

を用意していただき、これらの書類を専門家に精査してもらいました。

すると、後遺障害等級を獲得できる可能性があるとのことでした。そこで、当職が医師と面談の上、医師に後遺障害等級認定のための意見書を作成してもらい、意見書や相談者様に作成していただいた現況報告書、当職が作成した後遺障害等級異議申立申請書とを併せて加害者の自賠責保険会社に提出しました。

その結果、相談者様の後遺障害は後遺障害等級14級9号に当たる、との認定結果を得ることができました。

~注意点~

本事例を通じての注意点を何点か申し上げます。

=症状固定の意味や時期=

症状固定とは、これ以上治療を継続しても将来症状が改善する見込みがない状態をいいます。Aさんのように治療を継続している被害者の方が、ある日突然、加害者の保険会社からこの症状固定を打診されることがあります。症状固定の打診の具体的意味は、これ以上治療費は支払わない、ということです。したがって、安易に保険会社の打診に応じてしまうと、症状が残っており治療を継続したいけれども治療費が支払われない、という結果になりかねません。

症状固定かどうかを決めるのはあくまで医師です。そして医師は客観的資料のほか被害者の方の話も参考にしながら症状固定かどうかを決めます。したがって、病院を受診した際には、ご自身の症状を医師にきちんと伝え、医師とよくコミュニケーションを取りながら治療を進めていくことが大切です。

=任意保険会社が行う「事前認定」=

後遺障害等級認定の申請方法は「事前認定」と「被害者請求」の2通りがあります。事前認定は後遺障害等級認定の申請を加害者の保険会社を通じて行う方法で、被害者請求は文字通り、被害者自らが行う方法です。

今回、Aさんは事前認定の方法で申請を行っています。確かに、事前認定は後遺障害診断書さえ保険会社に提出すれば、後の手続きは保険会社が行ってくれるため、書類の収集から記載、提出までを被害者自身で行う被害者請求に比べ楽です。しかし、保険会社が後遺障害等級の認定を受けるために積極的に資料を収集したり、不備な個所の修正を促してくれるわけではありません。また、手続きを自分で行わない分、適切に申請が行われているのかという手続きの不透明さに対する不安もぬぐえないでしょう。

こうしたデメリットを感じたくなければ、手間はかかりますが「被害者請求」による申請をお勧めします。

~おわりに~

後遺障害等級を獲得できるか否かは、後遺症による逸失利益や後遺障害慰謝料に大きく影響します。後遺障害等級に関して少しでも不安のある方は、はやめに専門家へ相談されることをお勧めします。

以上