交通事故を起こしても逮捕されない?逮捕と交通事故の関係について解説

2021年10月10日 オフ 投稿者: 田中

池袋で高齢者のドライバーが複数の死亡者を生じさせてしまうという痛ましい事故が昨今では大きく報道などで取り上げられました。被害者の遺族の方が積極的に情報発信をされるなど、この事件は社会で大きな関心事となって取り上げられました。
この事件では、高齢者のドライバーという点がクローズアップされていましたが、それと同じくらい人々の関心事となったのが、被疑者が逮捕・拘留されなかったという点です。果たして、被疑者は常に逮捕などの身柄勾留をされることになるのでしょうか?
今回は、誤解されやすい逮捕などの身柄拘束と交通事故との関係について解説します。

逮捕とは?

まず、逮捕とは何かというところからお話を始めたいと思います。逮捕というのは、逃亡又は罪証隠滅を防止するため、被疑者の身柄を拘束し、指定場所まで引致することをいいます。一般的に逮捕は刑罰の一種のように捉えられている様に感じますが、まずその点は誤解で、逮捕はあくまでも証拠隠滅を防ぐために身柄を拘束するのであって、逮捕それ自体は刑罰権を行使するために行われるものではありません。
被疑者を放置しておくと、証拠を隠滅してしまうのでそれを防ぐために行うのです。この点をまず抑えておきましょう。

逮捕の種類

逮捕には①通常逮捕②緊急逮捕③現行犯逮捕の3種類があります。①は令状つまり逮捕状に従って行われる逮捕です。②と③は令状が無くてもできる逮捕で、②は事後的に令状発布を受ける必要がありますが、③は不要です。
よくテレビなどで見られる逮捕で令状を示して逮捕しているのが①、薬物の所持などでその場で逮捕されるのが③の場合が多いでしょう。

逮捕の要件と池袋の事件


逮捕の要件は①~③によって異なります。また全ての要件を解説することは今回は省かせて頂きますが、重要な要件として逮捕の必要性、つまり罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがあることが要件の一つとなります。
これは個別具体的な判断を擁することになりますが、例えば池袋の事件の場合には次のように考えることができます。
まず、被疑者は高齢で社会的地位もある人間です。そのため、普通の人より全てを捨てて逃亡するという可能性は低いと考えられます。
また、あの事件の場合、証拠は現場に集中しており、被疑者が運転している自動車と目撃者の証言などを警察が事故当時に聞き取りが完了していれば証拠隠滅する証拠がほとんど存在しないことになります。
以上を考えると、この事件では逮捕する必要性が低いという結論になるのです。