交通事故の基礎知識~知っているようで知らない自賠責保険と任意保険の役割
交通事故に関する業務を行っていると、自賠責保険と任意保険の役割について、相談者の方がきちんと理解されていないことに気が付きます。
おそらく多くの方が「自賠責保険=強制加入」、「任意保険=任意加入」という理解にとどまっているのではないでしょうか?
今回は自賠責保険と任意保険、それぞれの位置付けや役割に関してご説明します。
〔自賠責保険と任意保険の位置付け〕
【自賠責保険】
自賠責保険とは「自動車損害賠償責任保険」の略です。自動車損害賠償保障法によって定められ、自動車や原付バイクを使用する際に加入が義務付けられています。そのため「強制保険」とも呼ばれています。
稀に加入していない人もいますが、自賠責保険に未加入だと車検を受けることができません。(次回の有効期限+1ヶ月の加入を求められます)
自賠責保険は、人身事故を起こしてしまった場合に被害者に最低限の損害賠償保障をする保険であり、被害者保護を制度の目的としています。
補償の限度額は、以下の通りです。
- 死亡:3,000万円
- 後遺障害:4,000万円(等級による)
- 傷害:120万円
【任意保険】
任意保険とは車輌の使用者が任意で加入する保険で、その加入率は80~85%程と言われています。
任意でありながらこれだけ多くのドライバーが加入する理由としては、補償額の高さが挙げられます。
自賠責保険は被害者に最低限の保障をすることが目的であるため、賠償額に限度が設けられています。
しかし実際の交通事故では、自賠責保険の補償限度額を超える賠償請求をされることも珍しくなく、その差額を埋める保険として任意保険の需要があるのです。
任意保険の補償限度額は、契約しているプランや掛け金によって違います。
【任意保険会社による一括払い】
上記の内容は多くの方が認識していることかと思いますが、一方であまり知られていない任意保険の利用方法があります。
それは「一括払い」と言う制度です。
交通事故の加害者になり、損害賠償額が自賠責保険の限度を超えてしまった場合に、加入している任意保険会社が損害賠償額の全額を一括で支払う制度です。
この制度を利用すると、任意保険会社が一旦全額を被害者や関係医療機関に支払います。
そして自賠責保険分は、後日、自賠責保険会社に請求・回収してくれます。
これにより加害者は「自賠責保険会社」と「任意保険会社」それぞれに手続きをする必要がなくなり、事後処理がスムーズに終わります。
また被害者側も、治療費などの立替をする必要がなくなり、経済的負担をしなくて済むのです。
〔物損事故の場合の両者の違い〕
【自賠責保険】
先程も述べたとおり、自賠責保険は人身事故の被害者保護を目的とした保険です。
そのためご自身が運転する車輌の損傷や、人的被害を伴わない物損事故の場合には適用がありません。
自賠責保険は最低限の補償を図るための保険制度です。
「これだけで大丈夫」
とは考えずに、車輌を使用する場合には任意保険にも加入しておくのがおすすめです。
【任意保険】
任意保険は、損害賠償の請求額が自賠責保険の限度額を超えた場合に、差額を埋めてくれる心強い存在です。
その補償範囲は人的損害だけでなく、契約内容によって物損事故にも対応してくれます。
また任意保険は、掛け金によってさまざまなオプションが用意されているのも特徴です。
人的損害や物的損害の加害者になった場合に限らず、自分の車輌を損傷する「自損事故」や、同乗者にケガを負わせた場合の損害賠償にも対応できます。
最近ではロードサービスが無料で利用できる商品も増えており、単独でトラブルに遭ったときにも頼れる存在になっています。