解決事例~むち打ちで後遺障害等級14級9号

解決事例~むち打ちで後遺障害等級14級9号

2020年2月20日 オフ 投稿者: 田中

今回は、交通事故でむち打ちの怪我を負ったご相談者様の後遺障害等級認定申請で、14級9号を獲得できた解決事例をご紹介します。

~交通事故からご相談に至るまでの流れ~

タクシー運転手の相談者Aさんは、ある日、プライベートで自家用車を運転中、路外施設に右折して入りたかったため、いったん停止して対向直進車が通過するのを待っていたところ、後方から進行してきたVさん運転の自動車に追突されてしまいました。

Aさんは追突による衝撃で首を痛め、事故後病院を受診したところ「外傷性頚部症候群」(いわゆるむち打ち)との診断を受けました。

Aさんは首の痛みから仕事を休まざるを得なくなり、労災保険もおりず収入が激減したことから、事故後約1か月経ち、加害者から損害に見合うだけの損害賠償金を獲得できないか、ということで相談にみえられました。

~損害賠償金獲得のための前提となる知識①:損害の費目~

Aさんの交通事故による「損害」と一言でいっても「損害」の費目は様々ありますから、まずはこれを整理する必要があります。

損害には大きく、怪我や死亡した場合の「人的損害」と車などが壊れた場合の「物的損害」に分けられます。

人的損害、物的損害ともさらに財産的損害と精神的損害に分かれます。

人的損害の財産的損害には積極損害と消極損害があります。積極損害には治療費、通院交通費などがあります。消極損害には休業損害、後遺症による逸失利益などがあります。

人的損害の精神的損害には傷害慰謝料、後遺障害慰謝料などがあります。

治療費、通院交通費(ただし、相当性、合理性が認められる範囲の費用に限る)は、加害者が任意保険に加入していれば、基本的に症状固定までの間は加害者の保険会社から病院へ直接支払われます。したがって、この場合、被害者が治療費などを負担することはありません。ただし、先に加害者側に治療費などを負担させている分、後々獲得できる損害額からはその分を差し引かれます。

問題は消極損害の休業損害、後遺症による逸失利益、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料です。特に、後遺症による逸失利益(後遺障害がなければ得ることができたであろう利益)と後遺障害慰謝料(後遺障害によって受けた精神的苦痛を金銭に換算したもの)を獲得するためには、加害者が加入している自賠責保険会社から後遺障害等級の認定を受けなければなりません。認定を受けることができなければ(「非該当」となれば)損害賠償金の増額は見込めませんし、認定を受けることができれば等級に応じた後遺症による逸失利益と後遺障害慰謝料の獲得することができ、最終的には増額した損害賠償額を獲得することができます。

~損害賠償金獲得のための前提となる知識②:後遺障害等級と認定までの流れ~

後遺障害等級とは後遺障害、すなわち、交通事故に起因する後遺症で、将来その症状の改善が見込めなくなった状態(この状態のことを症状固定をいいます)になっときに残存する障害、の重さを等級(レベル)で表したものをいいます。介護を要しない怪我の場合は、後遺障害の程度が重い1級から一番軽い14級まであります。さらに級ごとに区別された症状ごとに号数が設定されています。なお、むち打ちの場合「14級9号」と認定されることが多いです。なお、14級9号には「局部に神経症状を残すもの」と書かれています。

この後遺障害等級は何のためにあるのかというと、先ほども少し触れましたが、後遺症による逸失利益と後遺障害慰謝料の計算のためです。仮に、Aさんが後遺障害等級認定の申請の結果、等級の認定を受けることができれば後遺症による逸失利益と後遺障害慰謝料の獲得、ひいては損害賠償額を増額させることができます。

後遺障害等級を獲得するためには、必要書類を加害者の自賠責保険会社に提出しなければなりません。提出後は、自賠責損害調査事務所が書類などを基に必要な調査を行い、調査結果を自賠責保険会社に通知します。自賠責保険会社はその調査結果に基づき、該当か非該当か、該当するとして何級の何号に該当するのかを被害者に通知します。

~当職が行ったこととその結果~

他覚的所見が認められない「むち打ち」では、適切な後遺障害等級を獲得するためには、医師の最終的な診断結果(後遺障害診断書に記載された内容)のみならず、治療・通院経過、頻度、治療・検査内容なども大切になってきます。

そこで、当職は適切な後遺障害等級獲得のために必要な治療、検査内容が行われるよう、Aさんの担当医師と面談した上、必要な事項を聴取し、聴取結果を報告書という形で書面化していきました。また、必要に応じて医師に直接文書で紹介し、回答をいただきました。また、ご相談者様には定期的に病院へ通院し、医師とコミュニケーションを取りながら治療・検査を受けることをアドバイスしました。また、日生活における怪我による支障なども逐一確認して報告書にまとめました。

そして、こうして作成した書類や医師が作成した後遺障害診断書を自賠責保険会社へ提出して後遺障害等級認定を申請した結果、14級9号の認定を受けることができました。

~おわりに~

むち打ちは交通事故による怪我の中で一番多い怪我と言われています。しかし、適切な後遺障害等級認定を受ける方は意外と少ないです。その原因として考えられるのは、認定のための適切な行動をとっていなかったり、適切な資料がなく保険会社に提供できていない点にあります。それゆえ、適切な後遺障害等級を獲得するには事故直後から専門家にご相談いただくことが肝要です。

以上